自由財産とは|自己破産しても管財人に処分されない破産者の財産
「自己破産をすると、手持ちの財産を全て換価処分され、手元に残せなくなってしまう…。」
そう不安になる方はとても多いです。
確かに、自己破産をすれば借金が原則として全額免除されますが、その代わりに破産者が持つ財産・資産は裁判所に換価処分され、債権者に配当されます。
これは、借金の返済を要求できなくなる債権者の利益を守るためです。
しかし、自己破産で借金をなくして生活を立て直そうとした破産者が、生きていくための最低限の財産も失ってしまっては本末転倒です。
そこで、破産者の経済的更生を目指す自己破産手続では、「自由財産」という「処分されない財産」が定められています。
ここでは、自己破産でどのような財産が処分されないで済むのか、「自由財産」についてわかりやすく説明します。
このコラムの目次
1.自由財産とは?
自己破産は、破産者が持つ財産を債権者に配当する代わりに、破産者が債権者に支払うべき借金の返済義務などの債務を、原則として全額免除するというものです。
自由財産は、自己破産で損害を受ける債権者のことを考えてもなお、「債務者の生活を守るために配当すべきでない」とされた財産です。
なお、自己破産手続きにおいて財産の処分、及び自由財産が問題となるのは「管財事件」となる場合のみです。
破産者が、不動産などの自由財産の範疇を超える高価な財産を持っていて、債権者への配当が可能な場合などには、原則として「管財事件」が採用されます。
管財事件は手続きが煩雑なため、裁判所は手続きの補佐として「破産管財人」を選任しますが、この破産管財人が破産者の財産の管理処分権限を持つことになり、財産の処分・換価・配当の手続き行います。
(一方、破産管財人が選任されない簡易的な手続きは「同時廃止」と言います。)
つまり、「自由」財産と呼ばれるのは、本当なら破産管財人の管理下に置かれ破産者が自由にできないはずの財産が、特別に破産者の自由にできる財産となっている、という意味合いなのです。
なお、自由財産ではない、管財人の管理下で処分・換価される破産者の財産のことを「破産財団」と言います。
2.自由財産の具体例
では、具体的にはどのような財産が「自由財産」として、処分されずに済むのでしょうか。
自由財産については、破産法等に規定がある他、細かな運用は裁判所により異なります。
(1) 99万円以下の現金
破産法34条3号1号及びその他の法令などにより、現金99万円までは自由財産とされています。
注意が必要な点は、法律上、自由財産として定められているこの「現金99万円」は、あくまでも「現金」に限るということです。「預貯金」はこれに含まれません。
たとえば現金が50万円、預貯金が49万円あったとすると、法律上は、自由財産となるのは現金50万円のみなのです。
預貯金を全て引き出して現金にすれば処分を免れますが、これを独断で行うと不当な財産隠しだと裁判所に思われてしまう可能性がありますので、一度弁護士の指示を仰ぐことをお勧めします。
(2) 差押禁止財産
民事執行法などで差押禁止財産とされているものは、破産手続上も自由財産とされます(破産法34条3項2号)。
たとえば、生活必需品は処分されることはありません。「自己破産するとテレビや冷蔵庫などの家具家電も、布団も、食器も持っていかれる!」というのは間違いです。
(しかし、同じ家電が二つある場合の片方や、超大型のテレビ・ブランド品などのぜいたくな品である場合には、それらの財産を処分されてしまう可能性はあります)。
また、年金などの社会保険、生活保護などの公的な受給権、行政からの給付金なども、差し押さえは禁止されています。
ただし、口座に振り込まれて預貯金となってしまえば、それらを他の財産と区別することは難しく、差押禁止財産と認められない可能性もあります。
(3) 新得財産
自己破産手続開始決定後に破産者が新しく手に入れた給与などの財産は、「新得財産」と呼ばれ、処分対象から外されています。
つまり、破産手続中に得た給料までも処分されてしまうことはないので、ご安心ください。
3.自由財産の拡張について
99万円以上の現金や差押禁止財産でなくとも、裁判所の判断で自由財産として扱ってもらえることがあります。
これは「自由財産の拡張」と呼ばれています。
破産法では、自由財産を拡張するには、裁判所に申し立てをしてその許可を受けることが必要とされています。
(裁判所は許可の判断に際して破産管財人の意見を聞くことになっていますので、実際には破産管財人を説得することになります。)
もっとも、各地の裁判所は、運用上、「価値が低いけれども一般に生活の中で重要と思われる財産」については、許可手続きをしなくても自由財産として認めています。
おおむね、認められやすいものとしては以下の通りです。
(主に20万円を基準としている裁判所が多いです。)
- 20万円以下の預貯金
- 保険の解約返戻金(20万円以下)
- ローン支払いを終え、査定額が20万円以下の自動車・バイク
- 職金の一部
- 敷金
以上のような裁判所の運用を超えて、さらに自由財産の範囲を拡張することも可能です。
しかし、基本的にどの裁判所もかなり厳しい判断をしています。
この許可がされるかは、各地の裁判所の運用・破産管財人の姿勢・具体的事情に基づく財産の必要性の程度次第です。
どのような財産を、いくら自由財産として認めるかは、各地の裁判所により大きく扱いが異なります。
裁判所の運用に詳しい地元の弁護士と、財産の内容・残したい財産についてよくよく相談してください。
千葉地方裁判所松戸支部の運用
千葉県内で、松戸市、野田市、柏市、流山市、我孫子市、鎌ケ谷市に住居を置く方が自己破産する場合は、千葉地方裁判所松戸支部が管轄になります。
千葉地方裁判所松戸支部では、比較的お持ちの財産を残せる運用をとっています。
たとえば、現金が40万円、保険の解約返戻金が25万円、車の価値が30万円の場合を考えてみましょう。
東京地方裁判所であれば、保険の解約返戻金も車も、20万円以上ならば原則として処分対象です。
しかしこの場合、資産の合計金額は95万円(総額99万円以内)です。
千葉地方裁判所松戸支部では、財産の総額が99万円未満であれば(自由財産の拡張が認められれば)現金も保険の解約返戻金も車も自由財産とできる可能性があります。
もちろん、当然には自由財産にはならず、裁判所の許可が必要ですから、保険を継続したい事情・車を持ち続けたい事情について、破産者の具体的な生活状況に基づいて破産管財人を説得しなければならないことは忘れないでください。
4.松戸市周辺で自己破産をお考えなら泉総合法律事務所松戸支店へ
自由財産制度は、各地の裁判所で運用が異なっていること・破産管財人や裁判所への説得次第で範囲を拡張できることなどから、インターネット上の知識だけでは上手く対応することが難しい問題です。
よって、早いうちから弁護士に相談することをお勧めします。
泉総合法律事務所は、関東地方に多くの支店を構え、千葉地方裁判所松戸支部における自己破産申立ての経験も豊富です。
自己破産する人が少しでも多くの財産を持ち続けられるよう、しっかりと裁判所と破産管財人に説明をいたします。
松戸市周辺の方で自己破産などの債務整理を検討されている方は、是非とも泉総合法律事務所松戸支店へご相談ください
-
2020年11月17日債務整理 自己破産のメリット・デメリット
-
2019年10月18日債務整理 自己破産を弁護士に依頼するにあたってやってはいけないこと
-
2018年6月18日債務整理 自己破産は泉総合法律事務所松戸支店にお任せください!