盗撮で後日逮捕された場合の正しい対応方法
盗撮すると、その場では逮捕されなくても「後日逮捕」される可能性があります。
後日逮捕とは、犯罪行為をしたとき(現行犯)ではなく、後から警察の捜査の手が及び逮捕されることです。
では、盗撮で後日逮捕される理由はどのようなものであり、また、盗撮で逮捕されたらどのような罪になるのでしょうか?
今回は、盗撮によって成立する犯罪や後日逮捕された後の流れ、対処方法など、盗撮に関する重要な事柄について解説していきます。
1.盗撮で成立する犯罪
まず、盗撮をした場合に成立する犯罪について説明します。
(1) 迷惑防止条例違反
盗撮をすると、多くのケースで「迷惑防止条例違反」となります。
迷惑防止条例とは、公共の場における暴力的な行為やわいせつな行為、つきまとい行為などを規制するための各自治体の条例です。
千葉県の迷惑防止条例の正式名称は「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」です。
千葉県の迷惑防止条例における盗撮行為規制は、令和2年に改正され、盗撮を禁止する場所が広がり、罰則も強化されています。改正法は令和2年7月1日施行されました。改正後の内容は下記のとおりです。
千葉県「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」における盗撮行為規制の内容(令和2年7月1日施行)
禁止される行為(第3条の2第1号) みだりに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、次にかかげるもの |
|
盗撮行為 |
人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機等(※)を用いて撮影する行為 |
---|---|
写真機等の差し向け行為・設置行為 |
盗撮行為の目的で写真機等を差し向ける行為・設置する行為 |
※写真機等には、赤外線カメラのように、衣服を透かした状態を透視撮影することができる機器も含みます。
禁止される場所 |
具体例 |
---|---|
人が通常衣服の全部又は一部をつけない状態でいる場所及び住居 (第3条の2第1号イ) |
銭湯、更衣室、便所、試着室、ホテルや旅館の客室内、住居内の浴室・トイレ、寝室など |
公共の場所(同号ロ) |
駅、公園、道路など |
公共の乗物(同号ロ) |
バス、電車、飛行機など |
不特定又は多数の者が利用・出入りできる場所(同号ハ) |
学校、事務所、漫画喫茶など |
不特定又は多数の者が利用できる乗物 (同号ハ) |
タクシー、スクールバスなど |
禁止される行為 |
罰則 |
---|---|
盗撮行為 |
・1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 (第13条第1項) ・常習犯は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金 (同第2項) |
写真機等の差し向け行為・設置行為 |
・6月以下の懲役又は50万円以下の罰金 (第13条の2第1項1号) ・常習犯は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 (同第2項2号) |
参考サイト:千葉県警「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(卑わいな言動)の改正について」
(2) 軽犯罪法違反
盗撮行為の多くは、同時に、他人のプライベートな空間を覗き見する行為を伴います。
これは軽犯罪法が定める「正当な理由なしに人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけずにいる場所をひそかにのぞき見た者」に該当し、拘留または科料で処罰されます(軽犯罪法第1条23号)。
拘留は30日未満の身体拘束、科料は1万円未満の罰金であり、負担そのものは小さいですが、有罪判決ですので、前科として一生記録に残ることは懲役刑などと変わりありません。
(3) 住居侵入、建造物侵入罪
盗撮行為目的で他人の家や建物に入り込んだ場合、「住居侵入罪」「建造物侵入罪」が成立する可能性があります。
住居侵入罪や建造物侵入罪は、管理権者の意思に反して住居や建物に侵入した場合に成立します。
一般に開放されている建物であっても、通常、住居や建物の管理権者は盗撮目的を持った人の侵入を許可しないでしょうから、盗撮目的を持って住居や建物に侵入すると住居侵入罪、建造物侵入罪が成立するのです。
住居侵入罪、建造物侵入罪の罰則は3年以下の懲役または10万円以下の罰金刑です(刑法130条前段)。
2.後日逮捕とは
「逮捕」には複数の種類があります。盗撮の場合は「現行犯逮捕」か「後日逮捕(通常逮捕)」です。
現行犯逮捕とは、犯罪を現に行っている犯人や、犯人として追いかけられている人等をその場で逮捕することです。警察官だけではなく一般人でも行うことが可能です。
盗撮の場合、周囲の人に見つかって、その場で、あるいは逃げ出した先で取り押さえられた場合が現行犯逮捕です。
後日逮捕は、犯罪が行われた「その場・その時」ではなく、後になって警察が捜査を行い、逮捕状を取得して行う逮捕です。
こちらが逮捕の原則(通常逮捕)であり、現行犯逮捕は例外的な取扱いです。
後日逮捕できるのは警察官等だけで、一般人には逮捕権限がありません。また、警察が後日逮捕する際、必ず裁判所に逮捕状を請求し、事前に取得して、逮捕時に被疑者に示す必要があります。
裁判所が被疑者の自由を制限するに足る理由を認めた逮捕状なしに、むやみに警察官が逮捕することは認められていないのです。
盗撮をした場合は、犯行後、数日〜数週間以上が経過してから、突然警察が自宅などにやってきて、逮捕状を示されて後日逮捕されることがあります。
事情によっては「任意に話を聞きたい」として警察署などに呼び出されることもありますが、これに応じて出頭した結果、逮捕されたり、応じなかった場合に証拠隠滅や逃亡の危険があると判断されて逮捕状を取られたりと、その後の展開は様々です。
3.盗撮で後日逮捕される理由
盗撮は、比較的現行犯逮捕の多い犯罪ですが、上記のように後日いきなり逮捕されることもあります。
なぜ、後で犯罪が発覚して後日逮捕されるケースがあるのでしょうか?
(1) 防犯カメラに写っている
1つは、スマートフォンや小型カメラ等で、現に女性の下着等を盗撮しているところや、盗撮カメラを仕掛けているところが、防犯カメラ(監視カメラ)に写っているパターンです。
駅や公共の場所、店内などでは防犯カメラが設置されていることが非常に多いので、そういった場所で盗撮行為をしていると、後日に発見されて逮捕される可能性があります。
(2) 仕掛けていたカメラを発見される
盗撮には、トイレや更衣室などにカメラを仕掛けて撮影するパターンがあります。
この場合、トイレの利用者がカメラを発見したことから盗撮が発覚し、犯人を特定されて逮捕に至るケースがあります。
(3) 他の犯罪で逮捕されて発覚する
盗撮以外の痴漢・淫行条例違反などの犯罪で逮捕された場合にも、所持品であるスマホを調べられて過去の盗撮が発覚するケースがあります。
4.盗撮で後日逮捕された後の流れ
盗撮で後日逮捕されたら、どのような流れになるのでしょうか?
捜査中に被疑者の身柄が拘束される刑事手続を一般に「身柄事件」と言います。
一方、逮捕や、逮捕に引き続いての勾留は不要と判断され、在宅のまま捜査が進められる手続を一般に「在宅事件」と言います。
ここでは、身柄事件についての流れを説明します。
(1) 警察署内で取り調べと検察官送致
盗撮で後日逮捕された場合、まず、警察に連れて行かれて留置場にて身柄拘束されます。そして、警察官による取り調べが行われ供述調書の作成が行われます。
警察官は、逮捕後48時間以内に事件を検察に送致します。ここでの送致とは、検察官のもとへ捜査関係書類と身柄を送ることです。
盗撮事件のうち、初犯で悪質性が低く被害者も許している、又は逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れが欠けるようなケースでは、検察に送致されずに釈放してもらえる可能性もあります。
(2) 24時間以内に勾留か釈放される
検察に送致後、引き続いて身柄を拘束する必要があると判断されると、24時間以内(かつ身体拘束から72時間以内)に検察官は裁判官に勾留請求を行います。
これを受けた裁判官は被疑者に勾留質問を行い、逃亡や証拠隠滅の恐れがあると判断した場合に勾留を決定します。勾留決定されると引き続き警察の留置場内に身柄を拘束されます。
(3) 身柄事件の場合、10~20日間勾留
勾留されたら、その後10日間身柄拘束されて取り調べを受けることになります。10日間では捜査に不足する場合、さらに最大で10日間勾留期間が延長されます。
身柄事件になったら、逮捕から勾留期間満了まで最大23日間、警察の留置場に身柄を拘束されることとなります。
(4) 起訴か不起訴か決定される
身柄事件の場合、勾留期間が満了する前に検察官が起訴するか、それとも身柄を解放するかを決定しなくてはなりません。
身柄が開放されるのは、不起訴又は処分保留になった場合です。不起訴ならば、その時点で刑事手続きは終了し、再捜査は行われないことが原則です。
処分保留でしたら、身柄は開放されるものの、捜査は継続されます。起訴されたら裁判となり、裁判官が有罪か無罪か、有罪となった場合は刑罰の内容などを判断します。
ただし、起訴された場合でも、略式起訴の場合は、より簡略化された書類上だけの裁判手続き(略式裁判)で罰金刑を科されることになります。
この手続は、被疑者が事実を認めており、略式裁判手続に事前に同意していることが必要です。盗撮の場合は、ほとんどが略式起訴での罰金刑となります。
5.盗撮で後日逮捕された際の刑事弁護
盗撮で後日逮捕されたら、早急に弁護士に対応を依頼すべきです。以下で、弁護士に依頼するメリットをご説明します。
(1) 逮捕直後の依頼で勾留請求しないように働きかけられる
盗撮で後日逮捕されたとき、早期に釈放されるには、勾留を防いで在宅事件にしてもらうことが有効です。
弁護士は、検察官に対し、勾留請求しないよう意見書や面談で働きかけることが可能です。
(2) 勾留請求されても却下を求められる
検察官が勾留請求をした後でも、弁護士は、裁判官との面談や意見書の提出によって、勾留請求を却下するよう求めることができますし、勾留決定された後でも準抗告という不服申し立て手続によって争うことが可能です。
最近は裁判所が安易に捜査機関の主張を受け入れて簡単に勾留を認めてきた過去の運用を是正する機運が生まれており、当初から勾留が認められない事案や準抗告により勾留が取り消される事案も絶対数は少ないながら増加傾向にあります。
(3) 被害者との示談を進め、不起訴にできる可能性を高める
盗撮で逮捕されたとき、不起訴など処分を軽くしてもらうには被害者と示談を成立させることが重要です。
弁護士は、被疑者が身柄を拘束されている状態でも示談交渉を進めて示談を成立させ、これを有利な事情として、検察官に不起訴の申し入れをすることが可能です。
6.弁護士に相談すると、後日逮捕を防げる可能性
盗撮事件で後日逮捕を防ぐには、早急に被害者と示談することによって、被害届の提出や刑事告訴を避けることが有効です。
しかし、被疑者が自分で被害者に連絡しても示談に応じてもらえない可能性が高いので、早めに弁護士に相談して示談交渉を依頼しましょう。
泉総合法律事務所松戸支店は、千葉県松戸市の地元に密着して積極的に刑事事件の弁護に取り組んでおります。
盗撮の容疑があり後日逮捕される恐れのある方、家族が後日逮捕されるかも?と不安を抱えている方は、どうぞお早めにご相談ください。
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