過払い金返還請求は司法書士よりも弁護士へ依頼すべき理由
過払い金の返還請求について、弁護士も司法書士も大量の広告宣伝をしていますが、基本的には、弁護士に依頼すべきです。
弁護士の方が、金額についても裁判についてもはるかに大きな権限を持ち、また、他の分野と異なり、費用もさほど変わらないからです。
以下、過払い金返還請求を、司法書士ではなく弁護士に依頼したほうがいいと言える理由を、具体的に説明します。
1.過払い金返還請求の基本
まず、基本的な過払い金返還請求の内容について説明します。
(1)過払い金とは
過払い金とは、2006年ごろまでに借金の返済をしていた人が貸金業者に返還請求をすることができる、支払いすぎていた利息のことです。
利息の規制が以前は不十分で、合法とも違法とも言えないグレーゾーン金利がありました。
貸金業者のほとんどは、グレーゾーン金利の上限いっぱいで利息を取っていましたが、最高裁判所は、グレーゾーン金利の下限までしか利息を取ることはできず、それ以上の金利による利息については、返還を請求できるとしたのです。
これにより、過払い金返還請求ができるようになりました。
(2)過払い金返還請求の流れ
貸金業者に対して取引の履歴を開示させ、その履歴をもとに過払い金の金額を計算します。
次に、ほとんどの場合、交渉で貸金業者に返還請求をすることになります。
貸金業者が後述するような反論をして、自主的に返還すると言ってきた過払い金の金額を値切ってきた場合には、貸金業者の主張する金額、反論の内容など次第では、裁判での返還請求に移ります。
請求額の元本が140万円以下なら簡易裁判所へ、140万円を超える場合には、地方裁判所へ訴えます。
第1審の判決の内容によっては、請求者側からあるいは貸金業者側から第2審へと控訴することもあります。
(3)貸金業者の反論
貸金業者は、過払い金返還請求により経営状況が悪化しています。
そのため、強硬な業者は徹底抗戦しますし、比較的余裕のある業者でも、下記の問題点があれば、返還額を値切り、また、裁判でも抵抗してきます。
①いったん完済した時点より前の過払い金の消滅時効
過払い金の返還請求権は、借金を完済するなど取引が終了してから10年経過すると、消滅時効により請求できなくなります。
一方、いったん完済していても、また借金をして取引を開始していた場合、空白期間の長さによっては、取引は完全に終了していたとは言えないとされています。
そのため、取引期間中に完済して借金をしていない期間があると、過払い金請求者と貸金業者の間で、取引が終了、分断していたかどうか、ひいては、完済以前の過払い金が消滅時効にかかっているかどうかで大きな争いとなるのです。
②借金返済の遅れがあった場合
借金の支払が遅れていた時期があった場合、貸金業者が一括返済をそのときすべきだったと主張してきます。
このように分割返済を許されていた借金について一括返済しなければならなくなることを、期限の利益の喪失と言います。
この主張が認められてしまうと、過払い金が戻ってこないどころか、遅延損害金の発生により借金が復活する恐れがあります。
③和解の存在
貸金業者が、借金返済に困った債務者に対して、和解を持ち掛け、その時に過払い金返還請求をしないと約束したと主張することがあります。
④取引履歴を開示しない
貸金業者の中には、過払い金の金額確認に必要な、取引履歴の開示に応じないものもあります。
暫定的な金額を計算して裁判に訴えた後、裁判所の制度を用いて、取引履歴の開示を促す必要があります。
以上のような過払い金の性質、返還請求の流れ、貸金業者の抵抗姿勢を踏まえて、過払い金返還請求は司法書士よりも弁護士へ依頼すべき理由を、金額、裁判の権限、費用に関して具体的に以下で説明します。
2.金額
弁護士はどんなに高額の過払い金でも、その返還請求について、交渉や裁判などあらゆる業務を請求者本人の代わりに行うことができます。
しかし、司法書士は、一定以上高額の過払い金返還請求については、交渉の代理すらできません。
過払い金返還請求などの交渉や裁判について、弁護士は一切制限がありません。
司法書士は、法律上(細かいところでは争いがあるのですが、一般的には)1社あたり140万円を1円でも超えると、後述する裁判はもちろん、貸金業者と返還交渉をすることも、返還請求者本人が貸金業者と直接交渉した内容を書面にすることも代行できないという制限があるのです。
過払い金返還請求は、取引履歴の開示をされなければ、金額のめぼしもつかないことがほとんどです。論点の内容や交渉の状況によっても、大きく金額が変わります。
そのため、司法書士に依頼すると、140万円を超えないと思っていたら、超えてしまった、と思ったら貸金業者は140万円以下しか支払わないと言ってきた、だが裁判なら140万円を超える請求ができなくもない…というとき、もはや手に負えません。
最初から弁護士に依頼したほうが、面倒なことにならないでしょう。
3.裁判
弁護士は、貸金業者との交渉はもちろん裁判についても、一切制限はありません。しかし、司法書士は、ここでも140万円以下の過払い金の訴訟業務しか代理できません。
さらに、代理できる裁判所も、簡易裁判所に限定され、地方裁判所・高等裁判所・最高裁判所での審理における訴訟業務は代行できないのです。
そのため、最高140万円を超えることはない過払い金の返還請求だからと言って、司法書士に簡易裁判所での裁判を依頼しても、貸金業者側が、基本の項目で説明したような消滅時効などの反論をして、地方裁判所に控訴した場合、請求者本人が裁判所に出廷しなければならなくなります。
司法書士は、地方裁判所など、簡易裁判所以外の裁判所では、書面の作成を補助することしかできません。
弁護士ならば、裁判になっても、書類作成も出廷も全て代行できますので、請求者は電話などで状況を確認するだけで済みます。
4.費用
しばしば、弁護士に対しては、敷居が高いということが言われますが、その理由の一つが弁護士費用の高さでしょう。そのため、弁護士への依頼を躊躇し、司法書士への依頼をすべきではないかと考えてしまう方も多いようです。
しかし、こと過払い金返還請求に関しては、費用は弁護士でも司法書士でもさほど変わりません。
相場としては、弁護士でも司法書士でも、交渉なら返還された過払い金の20%、裁判なら25%が一般的で、大きな違いはありません。
また、上記のとおり、過払い金返還請求の金額や裁判の内容について、弁護士と司法書士では権限の範囲に大きな違いがあり、その違いが、過払い金返還請求の不確実性や専門性と言った性質から言って、大きな問題になりやすいことからすれば、たとえ多少高額であったとしても、弁護士に依頼したほうが良いでしょう。
5.過払い金返還請求は弁護士に相談を
過払い金返還請求は、比較的簡単な請求ではありますが、金額が小さいものとは限りませんし、いまだに返還請求者と貸金業者の間で積極的に争われている論点も多くあります。
法律的な専門知識及び経験、そして何より法律上許されている権限がなければ対応できない事態に陥ることはしばしばあるのです。
司法書士は、140万円を超える過払い金返還請求については、交渉すらできません。
140万円以下の過払い金についても、裁判を用いない交渉と、簡易裁判所での裁判までしか代理できません。
しかも、過払い金の金額は見通しが付きにくく、また、意外と難しい論点があり、貸金業者が徹底抗戦してくることも珍しくないため、最初は司法書士で十分と思っても、結局弁護士に依頼し直さなければならなくなる可能性は非常に大きいのです。
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